🎙️【完全保存版ロングインタビュー】MazeWalker 優
- Maze Walker
- 6月18日
- 読了時間: 4分
「“迷路の中を歩く”という選択こそ、希望のプロトタイプなんだ。」
取材・構成:音楽誌 Re-Phase 編集部
「出口のない迷路に意味はあるのか?」この問いに、多くの人が「ない」と答えるかもしれない。だが、MazeWalkerのボーカル・**優(まさる)**は違う答えを持っている。
新曲「ロストワールド」を通じて彼が伝えたかったのは、「未解決」であることの価値であり、“探すこと”そのものの美しさだった。
それは単なるロックの枠を超え、今を生きる私たち一人ひとりへの、静かな問いかけでもある。
― まずは「ロストワールド」という楽曲について、タイトルに込めた意味を教えてください。
優(Vo.):「ロストワールド」って、直訳すると“失われた世界”ですけど、僕はそれを“記憶の中にしか存在しない未来”って捉えてるんです。ちょっと逆説的だけど、人って未来の理想を過去に預けるんですよ。「あのときこうしていれば」って。それって、もう存在しない“あり得たかもしれない世界”をずっと追いかけてる状態なんですよね。
この曲は、その“追いかけても届かない未来”と、それでも歩き続ける自分の在り方を肯定するものです。“失われたままでも、意味がある”――そう思えるようになるまでのプロセスを、音楽というフォーマットに落とし込んだ作品です。
― 歌詞では「迷路」「未完成」「出口がない」といったキーワードが繰り返し登場しますね。
優:迷路って、ネガティブなイメージが強いじゃないですか。でも僕にとっては逆で、**迷路こそが“生きている証拠”**なんです。
明確なゴールがあって、それに向かって一直線に進む人生って、ある意味で“もう決められている”ものですよね。でも迷っているということは、まだ選べるってこと。それって、実はものすごく自由な状態なんですよ。
― “迷いは自由の証明である”という視点は新鮮です。
優:現代って、「即答できる人=賢い」みたいな空気ありますけど、僕はそうは思わない。むしろ、即答できない複雑さの中にこそ、人間のリアリティがある。
迷いながらも、歩きながら、考えながら、それでも進む――そのプロセスを僕は“現代の祈り”と呼びたい。
― 「現代の祈り」ですか。
優:そう。僕にとって歌詞って、リリックというより“言葉の祈り”なんですよ。祈りって、明確な返答を求めるものじゃないでしょ?でも、祈ることで自分自身の立ち位置を確認できる。それと同じように、「ロストワールド」も、聴く人が自分の“場所”を再確認できる曲になってほしかったんです。
― 楽曲としての構造も非常に緻密に組まれていますよね。A→B→サビに至る流れが、まるで一つの小説のようです。
優:ありがとうございます。実はこの曲、構成自体を“迷路”として設計してるんです。Aメロで「今、僕はどこにいるのか」と問い、Bメロで「何を求めているのか」に揺れ、サビでようやく「それでも進もう」と決意が立ち上がる――という物語。
曲の中で「心のない優しさ」とか、「空回るメーデー」とか、言葉に“救われそうで救われない感情”を混ぜてるのも、迷っているときって、どんな言葉も芯を食わないからなんですよ。
― “芯を食わない言葉”というのは、ある意味で今のSNS社会にも通じる部分がありますよね。
優:まさにそうです。現代のコミュニケーションって、“浅い共感”が量産されてる。「わかる」「それな」で片付くことって、実は本質的には“わかっていない”ことが多い。
僕は、音楽だけはそうなってほしくない。だから「ロストワールド」では、あえて“共感しづらい深さ”を仕込んだ。“うなずけないけど、なんか刺さる”って感覚を生み出したかった。
― “深く迷える”というのも、ある種の能力ですよね。
優:その通りです。答えのない時間に耐えられる人間は、強いです。不安の中でも立ち止まらず、考え続ける姿勢に僕は希望を感じるし、そのプロセスこそが「生きている」ってことの証明なんじゃないかって思ってます。
― 優さんは、音楽に“哲学”を宿らせたいと以前からおっしゃっていますよね。
優:音楽って、“論理では辿り着けない場所”に届くんですよ。僕はそこがたまらなく好きで。でもだからこそ、論理を持った人間がやる意味がある。
自分が何を伝えたいのか、どこまで自覚的になれるか。音の中に、“言葉にできない思想”をどう滲ませるか。それをずっと探してきたし、これからも探していくと思います。
― 最後に、「ロストワールド」が今、どんな人に届いてほしいと思いますか?
優:答えが出なくて不安な人。今、どこを向いて生きたらいいか分からない人。自分だけ取り残された気がしてる人――そういう人たちに、この曲を“手紙”として届けたい。
“あなたは迷っている。でもそれは、あなたがまだ動いている証拠です”そんなメッセージを、遠くの誰かに届けられると信じています。
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